《アフターレポート》 公開授業「動き」の設計



木本圭子さんをお迎えした公開授業〈「動き」の設計〉がApple Store, Ginzaで行われました。
コンピュータを駆使した数理的な手法の造形で知られる木本さん。講座では、自身の作品や美術大学での学生作品を解説しながら、これまで実験を繰り返してきた様々な「動き」の表現手法についてお話しいただきました。
当日は受講生以外に一般の方も数多く来場され、普段よりも幅広い業種の方々にご参加いただく機会となりました。

日時|2012年6月23日(土)16:00-17:30
会場|Apple Store, Ginza
講師|木本圭子(アーティスト/デザイナー)
木本圭子:現代美術作家,武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科非常勤講師。多摩美術大学テキスタイルデザイン科卒業。1988年頃からコンピュータを使った数理的な手法による造形を始める。97年頃から,さらに一歩進んで,動的表現を探る制作を手掛けている。2006年度第10回文化庁メディア芸術祭アート部門大賞。著書に『imaginary・Number』(工作舎)。

→当日配付資料のダウンロード[A4/4P/3.8MB] 



◎講義の様子



木本さんは、造形にプログラミング言語を用いることによって、自然界から「動き」そのものを抽出したいといいます。自然の動きを、単に外から描写するのではなく、性質として似せたいーーそのために、プログラミングに《非線形》の仕組みを用いる。「係数を連続的に変えても状態は連続的にならない。これは、自然 のあらゆるところにあるメカニズム。このことが、非常にシンプルでしかし多彩な現象を生む。これに気がついたことが、わたしのスタートになりました」



非線形の仕組みから動きが描かれていく様子を解説する木本氏

そうして描き出された「動き」を、複数重ねたり、タイミングをずらしたり、繋げたり、といった操作によって多彩なグラフィックに展開していく様子が紹介されていきます。
「滝のようだとか、細胞の中のようだとか、見る方によって色んなことをおっしゃいます。しかし、滝を描く必要はないと思っているんですね。嵐や、細胞を描く必要もない。必要なのは、そ れらが共通に持っている性質を表現に持ち込むということ。そういうある種のアルゴリズムっていうのかな、仕組みを見出すことだと思います」


たくさんのピクセル一点一点に振動を与え、隣近所のピクセルとの関係の付け方を定義づけることで、全体の動きが決定していく〈結合〉という方法を使った動きの例。 外からの一括命令ではなく、ローカルな命令をうけた個々をたくさん繋ぐことで、空間の場所によって動きがすべて違う、という状態が生まれる。人間はこのような状態を、自然界や社会のなかに日常的に見ているという。


現在進行形のプロジェクトを含め、様々な展開の可能性をお話しいただいた。

「コンピュータが出てきて始めて触れるようになった、本来の自然というのがあるんだと思うんですね。科学の方、物理の方、生物の方、みなさんそこをやってらっしゃいますけれども、私は美術の立場からその自然のメカニズムを、ビジュアルとして取り出すことをしています」



続いては、武蔵野美術大学のデザイン科で行っている授業について、実際の学生作品を解説しながら紹介。
授業では、プログラミングの実践とともに「動き」そのもの目を向けるトレーニングを行います。扱うのは静止した世界ではなく、変化の様子。振る舞いのよしあしを判断する訓練として、自然の動きや、動きのメカニズムを観察する課題も。その中で、生徒が「動き」のモデルとして切り取ってきた映像の着眼点にハッとすることも多いといいます。
自分が教えていることは、非常に基礎的な部分。ここから生まれる表現の幅を、若い人達にここからどんどん広げてほしいーーと語る木本さん。


左:学生作品  右:プログラミング演習の初期段階




今回の講座は、制作の全体の流れや、考え方の入口を示していただくものとなった。最後の質疑応答では、今後のデザイン分野への応用の展望や、より具体的なプログラミングの手順を聞くものも。自然や生物の性質を取り込んだこのような表現への道が、デザイナーだけでなく、様々なジャンルを繋いで広がってほしいと語る木本さん。講義を終え、
「前回の2008年から4年経ち、時代が急速に動いていることを実感しました」
「次は、具体的な制作に繋がる実践をやりたいですね」とのお話をいただきました。
今後は、工学系の大学研究室でレクチャーを行う予定もあるそうです。


質疑応答。高度な講義内容ながら、様々なジャンルの参加者から質問が飛び交った

「今のデザイン界では、昔ながらの方法でデザインを繰り返しているように思う。新しい考え方を現実の中にもっと取り入れる可能性を探っていかなくては。今度は是非、実践編をお願いしたいと思います(学校代表 中垣)。」

















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